Bedroom Covers #6: BTS「Dynamite」

この記事を書いた人
管梓

エイプリルブルーの作曲とギター担当。
For Tracy Hydeや作家業でも活動。
ヒーローはザカリー・コール・スミス(DIIV)と木下理樹(ART-SCHOOL)。
親のお下がりのGR1sを手に入れて以来写真がアツい。
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明けましておめでとうございます!
エイプリルブルーのギターと作曲担当、管梓です。
今年も引き続きエイプリルブルーをよろしくお願い申し上げます。

さて、昨年末にBedroom Coversの第6弾としてBTSの「Dynamite」をカバーしました。
もうお聴きいただけておりますでしょうか。

原曲はこちら。

原曲のスタイリッシュな感覚を残しつつも、全体としては印象がかなり違うカバーになったのではないかと自負しています。
その秘密とは……?
今回も毎度恒例のアレンジ解説を行いたいと思います!
張り切ってまいりましょう!

アレンジ・ポイント:北欧の風

King & Princeの「koi-wazurai」のカバーと同様、今回は原曲との差別化を図る上で「四つ打ちの原曲の脱四つ打ち化」という発想からスタートしました。
当初僕から提示したのは
・Hi-Standardを意識したメロコア風アレンジ
・The CardigansやCloudberry Jam、カジヒデキなどTore Johanssonプロデュースのアーティスト群を意識したスウェディッシュ・ポップ風アレンジ
の2案。
しかし前者は原曲とも自分たちともあまりにイメージがかけ離れた攻めたアレンジとなってしまったこと、僕が高速でのブリッジ・ミュートに対応できなかったことから断念。
原曲のスタイリッシュさを引き継ぎつつ脱四つ打ち化できる妥当な落としどころとして後者を採用しました。

自分たちと同世代のリスナーだと「スウェディッシュ・ポップ」というジャンルになじみのない方も多いかと思いますが、これは文字通りスウェーデンのポップ・ミュージックを指す言葉で、とりわけ日本では90年代に同国から出現したギター・ポップやネオアコ的なスタイリッシュでレトロな感覚を持つバンドたちをこう呼ぶことが多い印象があります。
その代表的なプロデューサー/エンジニアがTambourine Studiosを拠点に数々のバンドを手がけたTore Johansson。
ほんのりローファイで軽快できらびやかな粒立ちのはっきりしたサウンドが一世を風靡し、日本では渋谷系との共振もあってカジヒデキなどが彼と共同作業を行っています。

今回アレンジの下敷きとなったのはスウェディッシュ・ポップの代名詞的バンドであるThe Cardigansのヒット曲、「Carnival」。

折りに触れてアピールしている通り、エイプリルブルーでの僕は「シンセサイザー/打ち込みを使わない」という鉄則の元でソングライティングをしています。
そのため、カバーを聴いて「あれ? エレクトリック・ピアノやオルガンが入ってる……」と思われた方もいらっしゃるかと存じます。
これらを入れるかどうかは自分もかなり悩んだのですが、熟考の末に「『Carnival』の雰囲気を再現する上でどちらも必要不可欠。しかもどちらもいわゆるシンセサイザーではない鍵盤楽器なので入れてもいい」という結論に達したため入れました。
演奏自体も打ち込みではあるものの自分がMIDIキーボードで手弾きした演奏をベースにしているのでなにとぞご容赦を……。

また、聴いての通り全体のアレンジはもちろん寄せていますが、今回のこだわりポイントとして音の質感もなるべく近づける努力をしました。
あえて厚みを出さないチープなドラム、メロで入るフェイザーのかかったオーバードライブ・ギター(この音、なぜかやたらTore Johansson作品に出てくる印象があります。Bonnie Pinkなども使っています)、など……。

アコースティック・ギターの質感は同じくThe Cardigansの「In The Afternoon」など1stアルバム『Emmerdale』の収録曲群を参照。

こちらも同じく、厚みを出さずに高域のきらびやかさを強めに出し、少ししゃりしゃりした感触に仕上げました。
ドラムやアコースティック・ギターなどの処理の際にナチュラルな歪み感を出すためにPlug & Mixの『Analoger』というアナログ・シミュレーター(テープや真空管アンプによるサチュレーションを再現し、アナログ感や温かみ、厚みを演出するプラグイン)を活用しました。

ムラオキにベースをオーダーする際に追加のレファレンスとして投げたのはCloudberry Jam「Elevator」。

男性コーラスの入れ方もThe CardigansやCloudberry Jamを参考にしました(僕がBedroom Coversで歌うのは今回が初!)。
終盤のフェイク群は原曲のにぎやかさを引き継ぐべく春ちゃんが奮闘してくれました。
さらに、BTSの原曲は同じコード進行の循環で構成されていますが、スウェディッシュ・ポップの持ち味のひとつであるベタなコード進行を取り入れてよりスウェディッシュ感を出すべく、大幅にコードをボイシングし直しました。
メロは原曲と同じコード進行を土台にしつつ、サビやCメロはまったく違うコードを当てがってお洒落で切ない雰囲気を演出しています。

世界的なヒット曲への挑戦ということで戦々恐々といったところではございますが、エイプリルブルー流「Dynamite」、お楽しみいただけましたら幸いです。

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