Bedroom Covers #4: Galileo Galilei「恋の寿命」

この記事を書いた人
管梓

エイプリルブルーの作曲とギター担当。
For Tracy Hydeや作家業でも活動。
ヒーローはザカリー・コール・スミス(DIIV)と木下理樹(ART-SCHOOL)。
親のお下がりのGR1sを手に入れて以来写真がアツい。
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ハロー!
エイプリルブルーの作曲とギター担当、管梓です。
公開からだいぶ経ちましたが、『Bedroom Covers』第4弾のGalileo Galileiの「恋の寿命」、お楽しみいただけておりますでしょうか。

原曲はこちら。

我ながらとてもいいカバーに仕上がったと自負しているのですが、こちらのカバーはなかなかの難産でした……。というわけで今回も毎度恒例のアレンジ解説をしていきたいと思います!

アレンジ・ポイント:困ったときの『Sing Street』

元々この曲は春ちゃんのお気に入りで、カラオケで歌っているのもたびたび耳にしていました。彼女がGalileo Galileiでもっとも好きな曲のひとつであり、歌いたいテーマが歌詞に詰まっているということで、この曲を取り上げるのは自然な成り行きでした。

しかし、ここでひとつ問題が発生します。

僕がカバーをアレンジするときの常套手段として、

・歪んだギターが鳴っている曲→クリーンな音にする
・クリーンな曲→轟音にする
・バンド・サウンドの曲→打ち込み主体にする

といった具合に原曲とは真逆のベクトルにするというものがあるのですが、まずエイプリルブルーにはシンセを使わないというルールがあるため打ち込みは入れられない。それから「恋の寿命」はそれなりに歪んでいるものの轟音とは言えず、かといってクリーンでもない、微妙なバランスのギター・サウンドになっているため、クリーンにしても轟音にしてもさほど驚きがない。そもそも原曲がアレンジがよく考えると不思議な感じ(音数が少ない箇所は極端に少なく、多くなっても隙間が感じられる)ですでに完成しきっている印象があり、どこをどういじったらいいのかまったくイメージが湧かない。そういった理由でなかなかアレンジが浮かばず、しばらく悩まされました。

最終的には意外性を捨て、シンプルにエイプリルブルーらしさの根本に立ち返ろう、という結論に達しました。

ふと頭をよぎったのが、メンバーが共通して『Sing Street』を好きであるという事実。『Sing Street』のサウンドトラックのオリジナル曲にはThe CureやThe SmithsなどのUKニューウェーブのオマージュのようなラブ・ソング「A Beautiful Sea」があります。

この曲の元ネタと思われるのが同じくサウンドトラックに使われているThe Cure「In Between Days」(個人的にはコナーがブレンダンにこの曲を勧められるくだりがめちゃめちゃ好きです……)。

そこからの連想で、UKニューウェーブを軸にしたドリーミーでロマンチックなアレンジにしようと思い立ちました。「In Between Days」の冒頭のドラムのフィルからはじまって、コーラスとディレイがかかったリード・ギターの音色、「Just Like Heaven」をイメージした下降していくリフや16分で刻まれるアコースティック・ギターなど、随所にThe Cureを連想させるモチーフを入れました。先述のシンセ使用禁止のルールによりシンセ・ストリングスなどのそれっぽい音色を入れられなかったのが残念……。

左チャンネルに入っている単音のリフは実はベースの高音弦で弾いています。ベースをギター・アンプ・シミュレーターに通し、コーラスをかけることで、ベースともギターともつかない音にしています。これはThe Cureのロバート・スミスのメイン・ギターが単なるギターではなく、Fender Bass VI(端的に言えばギターの各弦が1オクターブ下にチューニングされた状態の、6弦ベースとバリトン・ギターの中間のような楽器)であることをイメージしています。この一風変わったギターを使っていることが、あのハイとサステインの少ない丸っこいサウンドの秘密なのでしょう。

Cメロのアレンジは、タム中心のどこどこした16分のビートなどCommunionsの「Summer’s Oath」をイメージしました。これはThe Cureのサウンドからの連想で、UKニューウェーブ/ポスト・パンクの影響を現代に継承するバンドとして真っ先に浮かんだのが彼らだったので取り入れました(そんな彼らも近頃とんと話題にならなくなりましたね……)。

ムラオキにベースを頼むときにも「The Cureや初期Communionsの雰囲気で」とオーダーした記憶があります。Cメロやアウトロのせわしない感じがニューウェーブ然としていてとても好きです。

春ちゃんのボーカルは元々歌い慣れていて思い入れの強い曲だけあり、押しつけがましくないナチュラルな情感がこもっていて、Bedroom Covers史上最高のテイクになったと思っています。ラスサビの歌い回しがとてもグッド……。

そんなこんなではじめは難産だったカバーも、完成してみると原曲とはひと味もふた味も違いつつ雰囲気を壊しすぎない、なかなかいい塩梅に仕上がったのではないでしょうか。エイプリルブルーのドリーミーでロマンチックな「恋の寿命」、解説を踏まえて改めてお楽しみいただけたら幸いです!

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