Bedroom Covers #3: the brilliant green「angel song -イヴの鐘-」

この記事を書いた人
管梓

エイプリルブルーの作曲とギター担当。
For Tracy Hydeや作家業でも活動。
ヒーローはザカリー・コール・スミス(DIIV)と木下理樹(ART-SCHOOL)。
親のお下がりのGR1sを手に入れて以来写真がアツい。
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メリクリ!
エイプリルブルーの作曲とギター担当、管梓です。
デビュー・アルバム『Blue Peter』のリリースを盛り上げようと始動した『Bedroom Covers』、第3弾はクリスマス・イヴを祝うべく「ブリグリ」ことthe brilliant greenの「angel song -イヴの鐘-」にチャレンジ!

原曲はこちら(Youtubeでは聴けないのでサブスクリプションのリンクを貼ります)。

エイプリルブルーがセルフタイトル曲のMVを公開して以来たびたび引き合いに出されてきたthe brilliant green。

言うまでもなく僕も元々彼女らの音楽を好きで、「angel song」が含まれているアルバム『Los Angeles』はメインストリームのJ-POPがシューゲイズ/ブリットポップ的な轟音に最接近した瞬間のひとつとして深く心に刻まれています。ずっと本企画で取り上げたいと思っていたのですが、春ちゃんがTwitterでリクエストを募ったところこの曲の名が挙がり、晴れて取り上げさせていただくことができました。

アレンジ・ポイント:俺たちがCocteau Twinsだ

前回のKing & Prince「koi-wazurai」同様、この曲のアレンジもリズムからの連想が起点となりました。
「angel song」の原曲は聴いての通り4/4の3連のリズム。僕の著しく偏った音楽的語彙では3連といえばUKシューゲイズ/ドリーム・ポップの名門レーベル4ADを代表するバンド、Cocteau Twinsの「Fotzepolitic」。For Tracy Hydeの登場SEに使っていた時期もある大好きな曲です。

Cocteau Twinsはほかにも「Sugar Hiccup」や「Pearly Dewdrops Drop」(インディ・キッズ御用達の映画『ウォールフラワー (The Perks of Being a Wallflower)』で流れたことも印象深いですね)など3連の名曲が多く、今回「angel song」をアレンジするに当たって彼女らを参照点にすることは即決でした。


『Bedroom Covers』第1弾の「Hello, Again ~昔からある場所~」がMy Little Loverの繊細な原曲をOasis的マチズモで再解釈したアレンジだとすれば、今回は逆にOasis的な骨太さのあるサウンドの原曲を骨抜きしてCocteau Twins的なふわふわドリーミーな世界観で再解釈したアレンジです。

ちなみにイントロのアレンジは同じくCocteau Twinsを参照点にしているであろうTHE NOVEMBERS「クララ」を参考にしました。

実はCocteau Twinsの音づくりについてはギタリストのRobin Guthrieがインタビューで詳細に語っており、その要約が本人の公式サイトに掲載されています。今回主な参照点とした「Fotzepolitic」が収録された『Heaven or Las Vegas』の頃の音づくりを要約すると
・プリアンプから卓にライン録り
・各パートをダブリング(2回弾いて重ねることでタイミングやピッチのずれを活かして厚みを出す手法)し、さらにそれぞれのトラックをピッチシフターで±10セントにピッチシフトしたものを重ねてステレオ効果をつくる
・コーラスとディレイをかける
・重ねたトラックをパートごとに一本化して全体にコンプレッサーをかける
といった手順を踏んでいたようです。
……非常に面倒くさい。でもしかたないので自分の手持ちの機材で可能な限りこの手順を再現しました(プリアンプを所有していないためGarageBand内蔵のアンプ・シミュレーターで代用)。

ドラムはリズム・マシーン。ベースはモジュレーションをかけ、ペダル・ポイントや和音を多用(今回はどうしてもクリスマスに間に合わせたかったので本企画でははじめて村岡君にベースの録音を振らず、自分で演奏しました。ベースは難しいですね。もう弾きません。たぶん)。
そしておびただしい量のギターを重ねました。エイプリルブルーのために新しく買ったFenderの12弦ギター(青くて超かわいい奴!)が右チャンネルで鳴っています。アコースティック・ギターはマイクではなくラインで録音し、リズム・ギター的な目立たせ方をするのではなくあえて深めのリバーブをかけて輪郭をぼかすことできらびやかさを付加する隠し味として使用。間奏で入る歪んだギターはE-Bow(エレクトリック・ギターの特殊奏法で用いる機器。電磁波を発してギターのピックアップと反応することで弦を弾かずに振動させる。バイオリンの弓でボウイング奏法したときに得られる音色を疑似的に再現するために発明されたが、実際の音色はかなり異なる)を使用して独特の歪みを演出。非常にCocteau Twins/4ADチックなサウンドに仕上がったと自負しております。

その上に乗る春ちゃんのボーカルがまた非常にいい!
元々春ちゃんはthe brilliant greenを深く聴いているわけではなく、今回のためにこの歌を憶えたのですが、とても歌いやすくかつ出したい声を出せるポイントが多いためモチベーションがかなり上がったそう。2サビ~Cメロの「早くつかまえて抱きしめて欲しい…」のボーカリゼーションが非常に推せる。あと個人的に嬉しかったのはラスサビでもう1本声を重ねたい(Cocteau Twinsにありがちな演出)と思いつつどう指示するか迷っていたら、僕が言い出すまでもなく春ちゃんのほうから「終わりのほうにフェイクを重ねたい」と提案してくれたこと。彼女はほんとうにこういうところの勘がいい。

そんなこんなで出来上がったカバー、元々扱いなれているサウンドというのもあってかこれまででいちばん気に入っています。渾身の出来と言ってもいいでしょう。これを聴きながら思い思いにクリスマスをお楽しみください。よいお年を!

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